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2012年 1月25日発行(第553号)

主な記事/インテリア専門店かく闘えり サンプル記事

オーダーカーテン専門店の本流
「個」ではなく「会社」としてカーテンを売る組織づくり

インテリアハウス窓(静岡県駿東郡)


インテリアハウス窓の売場

本紙定点観測店である、静岡県駿東郡のオーダーカーテン専門店『インテリアハウス窓』(㈱コイケ・小池哲生社長)へ、約二年ぶりに取材に伺った。
「それほど変わったとこ ろはありませんが……」と話す小池社長、その言葉とは裏腹に、売場の雰囲気は明るく機能的に、そして開放的なイメージにガラリと変化していた。同店の最大の特徴である圧倒的な展示数を誇るメカものコーナーは、サンプル数を維持しながらスッキリと整理され選びやすさが向上、カーテンは什器前面部分を活用してスタイル展示を強化、タッセルやトリム、アクセサリー関連も多彩に展示されている。この他にも、売場中央には同店からのメッセージを分かり易く表現するなど、ユーザー視点での改良が随所に行われていた。冬の節電対策も独自の取り組みが実施されている。

実は二年前から、サンプル選定をはじめとする店舗運営全般を、スタッフに任せている小池社長。日々お客と接するスタッフに店舗運営を任せることで、より現場目線の機能的な売場に進化したわけだ。
「もちろん、丸投げではなく事前の説明は受けています。良い悪いではなく、その試みにどのような意図があるのか、ということがなければ、結果の反省ができません」
さて、改めて感じた記者の『インテリアハウス窓』の印象は、「これぞオーダーカーテン専門店の本流」。近年の専門店は、ニトリや一万円ショップといった大型店との対抗策として、接客を重視した対面販売型への傾倒が強まっている。その中で、商品は売場で見せるより接客を通じて提案していく形が主流になっていた。それに対して同店は、売場自体に提案がちりばめられ、フラリと立ち寄ったお客でも、オーダーカーテンの特徴や魅力が理解できるようになっているのだ。
しっかりとした売場をつくり、その上で専門店ならではの提案販売を行う同店。業種を問わず、ショップを構える専門店ならば当たり前のことだが、カーテン業界にはそれほど多くないのが実情ではなかろうか。

ニトリとの差別化を実現 次の一手は商圏の拡大


スッキリ整理されたメカものコーナー


独自の節電提案。保温効果を高めるカーペット提案。
ちなみに小池社長は、会社自体の節電対策にも注力、昨夏は「節電アクション」(経済産業省主催)に参加し、節電ポータルサイト「節電.go.jp」での同社ページのアクセス数が全国3位になった。

インテリアハウス窓からのメッセージ

被災地支援の小物販売

「『インテリアハウス窓』をオープンした時から理念として掲げていたのが、個ではなく会社としてカーテンを売る、ということでした。例えば百の力があって、一人のお客様に百を提供するお店もあれば、大型店のように一を百人に渡す考え方もありますが、当店のポジションは五の力を二十人に渡すような感覚です。それには接客はもちろんですが、売場も含めて組織的な販売体制を整えることが不可欠になります」と小池哲生社長は語る。
小池社長がこうした組織的な販売体制にこだわるのは、ショップを立ち上げた際の理念もさることながら、大型店の影響力がますます高まる環境下にあっては、専門店といえども価格競争力を高めなければ生き残れないと考えるからだ。
「お客様の価格に対する意識は、今後さらに高まっていくでしょう。その中で、専門店だからといって、価格は高くても良いということにはなりません。専門店であっても、システマイズした効率的な販売体制は必要だと思っています」
ここ数年、小池社長は独自のコンピュータシステムを開発・導入し、受発注や商品管理、現場管理の効率化を徹底して押し進め、スタッフの営業効率の大幅アップを実現、品揃えについても自社開発の選定ソフトを用いて、価格競争力のある生地と縫製スタイルの組み合わせを追求しながら行うなど、徹底したシステム化を実践、スタッフによる店舗運営と合わせて組織的な販売体制の構築を進めてきた(詳細は過去の紹介記事を参照されたい。過去記事は「定期購読者専用ページ」で掲載。No.459,500)。
その一連の施策の成果ともいえるのが、ニトリとの共存の実現である。ちょうど前回取材時の二年前、『インテリアハウス窓』から数百メートルという至近距離にニトリがオープンした。厳しい競合状態が予想されたが、結果的に売上は微増と堅調に推移した。
「具体的には、単価が下がって客数が増えて、売上は横ばいという形です。影響がなかったということではなく、マイナス面もプラス面もありましたので、プラスマイナスゼロというのが現時点での見解ですね」
マイナス面はやはり圧倒的な集客力と低価格であるが、ニトリだけで商品決定しないユーザーは多く、そうしたユーザーが同店に流れてくることになった。フラリと来店してくるフリー客が明らかに増えたそうだ。
そうしたフリー客をしっかり取り込んでいけるのが同店の強みであり、小池社長が目指してきたところだろう。基本的にニトリ客は、セルフ志向のため自分でモノを選ぶことに慣れている。もちろん価格に対する見方は厳しい。このようなユーザーを取り込むためには、売場での提案と価格競争力は不可欠である。
同店では、そうした環境を整備し、その上で専門店ならではの提案を乗せることで、見事に差別化を実現させたというわけだ。
「近くに出来たことがプラスにもなりました」と語る小池社長だが、それは『インテリアハウス窓』だからこそともいえよう。
すでに三島・沼津エリアでは地域一番店という評価を得ている同店。地元の建設業者や不動産からの紹介客も年々増加しているとのことだ。
「それでも現状の商圏でシェアをさらにアップさせていくのは、競合状況を考えても難しいと判断しています。今はチラシの配布方法を工夫するなど商圏を広げるような施策を行っていますが、将来的には、現在のショップを軸にして衛星店をターゲットエリアに出したいと思っています」
ところで話は大きく変わるが、昨年十二月十日号で掲載した「ふんばろう東日本支援プロジェクト/ミシンでお仕事プロジェクト」に、ボランティアとして活動に協力している小池社長。同記事でも紹介したが、『インテリアハウス窓』独自の協力として、プロジェクトで製作したエコバックやランチョンマットなどを買い取り、現在店頭で販売している。
「正直言って、カーテン専門店ではそれほどたくさん販売できませんので、主旨を賛同頂いた地元のショップさんにも置かせて頂いています。今は販売場所を増やす活動を行っています」
また最近では、プロジェクトが徐々に拡大していることから、被災地に送る生地が不足気味のため、生地収集係も担当するようになったという。
「昨年末に生地のご提供を呼びかけた際には、メーカーさん、専門店さん、縫製加工所さんなど多くの方にご協力を頂きました。大変感謝しております。被災者支援は継続化がもっとも重要ですので、生地のご提供、および販売についても引き続きご協力頂ければと思っております」
ビジネスにボランティアに、全力で取り組む小池社長であった。

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