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2011年 8月25日発行(第543号)

主な記事/インテリア専門店かく闘えり サンプル記事

「京都テイスト」のセレクトショップ
中間層をターゲットにこだわりの高級カーテンを提案

シービーソウム(京都市右京区)



海外ブランド中心に約1500点の
サンプルを展開

これまでのインテリア業界の常識は、「高級カーテンは富裕層に買ってもらう」というものだろう。しかし現実には、高級ベンツを乗り回しながらカーテンには一切お金を掛けないというユーザーは多い。その意味では、お金の有る無しに関係なく、お金を掛けても満足してもらえる存在にカーテンの価値を上げていかなければ、カーテンビジネスの発展は望めない。
こうした強い信念の下、ミドルゾーンに向け、海外ブランドをはじめとするこだわりのカーテンを提案するのが、京都市のオーダーカーテン専門店『シービーソウム』(吉川信也代表)だ。
「富裕層だけではなく、しっかりと提案していけばそうしたお客様はたくさんいらっしゃいます。それほど尖っているわけではありませんが、こだわったモノを求める方々の要望に応えられるようなお店にしていきたいと思っています」と吉川氏は語る。
同店の売場面積は約30坪。コンクリート打ちっ放しの壁面に一部輸入壁紙を貼ったお洒落な店内には、ボラス、シナサンド、マリメッコ、テイヤブルーンなどの北欧系ブランドをはじめ、カサマンス、ヴィラ・ノーヴァ、ウイルマン、デザイナーズギルド、ADOといったデザイン性の高い海外ブランドを中心に国内外約四十ブランド、約1500点のサンプルが展開されている。
同店が現在のようなスタイルになったのは、今から約5年前のこと。もともとインテリアメーカーに勤めていた吉川氏が、独立して本格的に事業を立ち上げたのは二〇〇〇年であるが、その当時は低価格帯の商品も含めて、幅広い品揃えを行っていたという。
転換したきっかけが、現在地への店舗移転だった。移転を決めた直後、その近辺に大型の価格訴求型カーテンショップがオープンすることになった。一万円ショップやニトリの存在感が高まってきたことから、それまでも徐々に品揃えの転換を図ってきた吉川氏だったが、この移転を契機に、輸入系メインの現在のスタイルへ完全転換を実行したのだ。

インターネット活用により集客 ブログに載りたいユーザーも


京都にマッチしたデザインをセレクトして展示している

デザインを切り口に中間層へ訴求

「シービーソウム」のブログ

もう一つ、同店が現在のスタイルへ転換する上でこだわった点が、「京都」という土地柄であった。
一千年以上の長きに渡り、日本の都として栄えてきた京都には、連綿と和の文化が息づいている。街の景観を保存するための細かな規制もあるなど、京都に暮らす人々は、保守的でプライドも高いといわれている。そうした中で、異文化の象徴でもあるカーテンを提案していくためには、京都に合った、いわば「京都スタイル」を追求していくしかない。素朴でシンプル、かつナチュラルなデザインを好む京都人には、意外なことに北欧系、あるいはブリティッシュ系のデザインテイストが非常にマッチするという。吉川氏は『シービーソウム』を、そうした京都人の感性に合う商品をセレクトした「京都スタイル」のショップに仕上げたというわけだ。
「全国チェーン店や大型ショップでは、このクラスの商品の提案は難しくなります。品揃えも売れ筋が中心の画一的なものになりがちですから、京都のテイストには合いません。当店は全国チェーンではなく、京都のカーテンショップですから、あくまで京都の方々の嗜好に合わせた品揃えにこだわりました。こうしたデザインにこだわったお店を展開することで、京都のお客様にカーテンの魅力をお伝えし、カーテンを価値のあるものにできればと思っています」
単に良いモノを取り揃えるというだけでなく、「京都」という土地柄に合わせた「京都スタイル」という確固としたテイストを構築することで、大型店との差別化を図りながら、ハイセンスでデザイン性の高い高級カーテンを中間層に対して提案する吉川氏。この取り組みが着実に実を結び、移転してからの五年間、当初こそ低価格ゾーンをなくした影響で若干の落ち込みはあったものの、その後は順調に業績を伸ばしてきたという。今では、例えば賃貸のワンルームマンションに暮らす学生が、たった数年間のためにマリメッコのカーテンを選ぶという状況も珍しくなくなってきたとのことだ。
ちなみに今夏の遮熱ブームに関しても、吉川氏はあくまでデザインを切り口に対応をしたという。業界では遮熱カーテンや遮熱ブラインドなどの遮熱系商材の提案がメインとなっていたが、同店では徹底してガラスフィルムを主体とした遮熱提案を実施した。
「遮熱カーテンも良いのですが、インテリア的に考えるとやはりおすすめできません。それなら遮熱に関してはガラスフィルムで解決して、カーテンはこれまでと同様に、ボイルやオパールプリントなどデザインを中心に提案していく方が良いと考えました」
またガラスフィルムについても、高性能で知られる「ソーラーガード(アメリカ製)」を提案、差別化を図っている。
さて、こうした同店のビジネス展開に大きく貢献しているのがインターネットだ。同社のこだわりのスタイルはインターネットによって京都中、そして関西全体に広がり、それを嗜好するユーザーが集まるようになった。
吉川氏は『シービーソウム』の情報発信源としてホームページ、ブログ、ツイッター、フェイスブックなどあらゆる媒体を活用しているが、中でも効果が高いのはブログとのことで、特色のある施工例写真を掲載しながら提案のポイントなどコメント付きで紹介している。当然ながら同店のこだわりが表現された質の高い施工例が紹介されるため、注目度が非常に高く、今ではこのブログに載りたいがために、同店にカーテンを注文にくるというユーザーも多いそうだ。やはりインターネット活用は、その店自身の特徴が明確であるほど効果が高いということだろう。
「それだけに、最近はブログの更新にプレッシャーを感じてしまっています。もう少し気軽に、施工例紹介が出来る仕組みも検討しています」
また、創業当初から、下請けをしない前売り業態を目指してきたという吉川氏だが、近年はインターネットや口コミなどで噂を聞きつけた地元のデザイン系ハウジングや設計事務所から自然と声が掛かるようになった。現在は売上の約三割がハウジング関連になっているという。このような理解者が増えていくことも、カーテンの価値を上げていくことにつながるだろう。
「ニトリさんが出てきたことで、家具が一生モノという感覚は少なくなりました。カーテンはもっと手軽ですから、何もしなければどんどん安物に流れていってしまいます。国内品でも海外品でもセンスの良いモノを提案することで、中間層の方々にカーテンの魅力をお伝えしたいですね」と語る吉川氏。カーテンの価値を高めていくのは、やはり専門店の役割である。そのことを改めて感じさせられた今回の取材であった。

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